1 月号で社会福祉士・ソーシャルワーカーのパウニーゆみこさんに、在宅での生活支援を目的とするコミュニティ-ケア-パッケージと、そのキーパーソンとなる ケアマネージャーの役割について紹介して頂きました。
今回は、もう少し要介護度の低い方たちへのサービスについて紹介して頂きます。将来的にこういうサー ビスが日本語または日本人によってなされるのが理想ではないでしょうか。
The Home and Community Care (HACC) Programは、コミュニティ-ケア-パッケージと同じく自宅での生活を望む高齢者へのサービスですが、ケアマネージャーがついてこないこと、サービス を購入する補助金が与えられないという点で、コミュニティ-ケア-パッケージとは違います。プログラムの多くは地元の市役所や保健所(Community Health Centre)から提供されるか、アボリジニや特定の国籍者を対象とした地域団体から提供される場合もあります。地元の市役所や保健所が提供することの多 いプログラムですから、幅広く多くの人に利用されています。
HACC Program の2009-2010 年度統計によりますと、利用者数はヴィクトリア州内で27万5千人をこえ、そのうちの28%は85か国からなる非英語圏出身者です。そのことをふまえ、ま たこのカテゴリーにふくまれる州民がより多くプログラムにアクセスできるようにと、プログラムのパンフレットは20 もの言語に翻訳されています。しかし残念ながら、日本語はありません。英語のパンフレットはヴィクトリア州政府のウェブサイトから閲覧可能です。
http://www.health.vic.gov.au/
hacc/hacc_victoria/brochure.htm
プログラムより提供されるサービスとしては、ホームヘルプ(掃除、洗濯などの家事の支援)、身体介護(入浴、排泄、衣類の着脱や食事の介助)、配 食サービス、軽度の住宅維持や修理(手すりの取り付け、電灯の交換など)、看護婦による健康相談、ボランティアによる家庭訪問、デイセンターにてアクティ ビティや他の高齢者たちとの交流、理学療法や栄養相談など専門的な助言や診察を受けることができます。
かかりつけのGP に紹介してもらうこともできますが、地元の市役所や保健所などに直接電話をかけ、問い合わせをする人が多いようです。問い合わせ後、アセスメントを受け、 自分の要介護度や地域のサービス利用状況によって、どれだけのサービスをいつから受けることができるのかが決定されます。サービスには使用料を課されるの が一般的です。
ケアマネージャーがついてこないということはすなわち、このプログラムを利用する人は、自立的にサービスのコーディネーションをする能力があると いうことです。これを強調するために、近頃の動向として、HACC Program におけるActive Service Modelという、利用者主体のサービス提供形態が注目されてきています。2007 年頃より、全豪でActive Service Modelを主幹にした試験的なプロジェクトが行なわれ、2008 年にはヴィクトリア州主催により全豪を対象にしたセミナーも開かれました。ヴィクトリア州政府は2009 年からこのモデルを全てのHACC Program に浸透させるべく、2 年ごしの実施計画を遂行中です。
このモデルは、サービス利用者個人の能力を維持、促進し、サービスはその手助けをしながらも利用者の自立性を尊重するという立場にたっています。 この立場にたって、プログラム提供者は、利用者とともにゴール設定、利用者の能力の評価、そしてゴールに達成するまでの支援をおこないます。
『自立を促す』といいますと、『税金を長年払ってきて、ようやくのんびりできると思っていたのに、まだまだ自分で自分の面倒をみろというのか』と 不満に感じる方もいらっしゃるようですが、実際には今持っている能力を維持し、困難に思っていることも手助けにより自力で行なえるようになるということ が、その後の心身の健康維持に大変効果があることが証明されています。自分の生活に関する決定権は自分にあるのだと認識することは、高齢者のみならず全て の福祉サービス利用者にとって、やる気を促される動力となるものです。ひいては『福祉サービスを与えられる者』としての受動的な立場から脱し、主体的に自 分の要介護度のアセスメントからサービスの提供における一連のプロセスに、提供者と対等の立場で関わりあうことのできる、これからの高齢者福祉サービスの 利用者は、そのような可能性を追求することのできるチャンスを与えられたと考えてもよいのではないでしょうか。
介護・看護士・理学療法士・ソーシャルワーカーなど、高齢者ケアーにかかわっている方がいらっしゃいましたらご連絡ください。今後、こういう方たちとネットワークを持ち、日系高齢者の方たちの役にたてる方向を探っていきたいと思います。
連絡先: みどり